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2015年7月23日木曜日

オールドパンク、哄笑する(ブコウスキー)

夕方近くになって、通りは車で混みはじめた。陽が次第に彼の背後に落ちていった。ハリーは車のドライバーたちにチラッと目をやった。幸せそうには見えなかった。世間は不幸だったのだ。みんな闇のなかにいた。みんな怖じ気づき、希望を失っていた。みんなが罠にはまっていた。保身に走り、頭がおかしくなっていた。人生を無駄にしているのではないかという思いにとらわれていた。だが、そのとおりだった。
ハリーはどんどん歩いていった。彼は信号で立ち止まった。するとその瞬間、まことに不思議な想いがわいてきた。この世界で生きているのは自分だけではないかという気がしてきたのである。

ぐうたら人生

民主主義とか機会均等にかんして、あれだけくだらないことをさんざん教えられてきたが、あれはただみんなに大邸宅に放火させないためだけだったのだ。確かに、ときには掃きだめのなかからはい出し成功したやつもいたが、そのひとりひとりに対して、ドヤ暮らしムショ暮らしに転落したり、精神病院にぶち込まれたり、自殺に追い込まれたり、ヤク中になったり酒びたりになったりした人間が五万といたのだ。それにもっともっと多くの人間が、みじめなまでの低賃金で働いており、最低限食っていくために何年も何年も人生を棒に振っていくのだ。
奴隷制なんてなくなってはいなかった。結局人口の九割を包み込むまでに拡大されただけだった。

思い切りが肝心

ものを書いていると人間は非現実的な空間に押し込められ、異様なはみ出し者になってしまう。ヘミングウェイがオレンジジュースを飲みながら頭を銃でふっとばしたのも不思議はない。ハート・クレインが船のスクリューに飛び込んだのも不思議はないし、チャタートンがネズミを殺す毒薬を飲んだのも不思議はない。唯一書き続けている連中はベストセラーを書いてる連中だったが、彼らは書いてるのではなかった。すでに死んでいた。

書けなくなって