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2013年10月5日土曜日

夢中占夢

「目をリストカットしたと書いてある」
 父がいう。
「おかしな表現だ」
 わたし。
「そうじゃない。中学生がそんなことをしているってことが問題なんだ」
「矛盾した表現だっていってるんだ」
「そんなことはどうでもいいんだ」
「あのときのことだって憶えていないからそんなことをいうんだ」
 深くえぐる傷。
 最悪な気分になって、飛び出す。浜へ向かってかけていく。
 すぐ、浜だ。明け方前で、真っ暗。遠くに月が浮かんでいるような気がする。満潮時で、浜の形が変わっている。よく、わからない。足の近くまで水がきている。少しだけ光を反射して、遠くまで、ぼんやりと。
 砂の上を、足早に歩いていく。後ろから犬がやってきた。この犬は、いい犬だ。少し、並んで歩く。そうしてすぐにどこかへ行ってしまう。
 さらに歩いていくと、自転車に乗った中学生たちとすれ違う。まったく同じ形の自転車で、白いのに乗っている子と、黒いのに乗っている子とにわかれている。男子中学生の集団におそれをなすというのは、誰でも抱く心理だろうか、などと考える。大人ではないが、子供でもないのだから。
 中学生たちは過ぎ去っていってしまい、同じ自転車に乗った高学年の小学生たちがあとからやってきた。先輩たちのあとに続いているのかもしれない。ふたり、知っている子がいる。片方は思い出せない。もう一方の子は、白い自転車で目の前まで迫ってくる。この子は、わたしを憎んでいる。わたしを圧迫してきて、しかし、思い出せない方の子が、なだめる。わたしのためか、どうか。あるいは、なだめていたのは、わたし自身か。
 やがて、その場を去って、いつの間にか、街へ、住宅地のなかへ出ていた。